【Music】Agust D / Dear My friend レビュー
(レビューとは名ばかりの、私と友だちの思い出話です。明るい展開じゃないので、気持ち弱ってる方は回れ〜右!ピッピッ!)
彼女とは小学校3年生の時にクラスが一緒になってから友だちになった。
なんで仲良くなったのかは覚えていない。
気づいたら学校で、彼女の家で、地元のそこかしこで毎日のように遊んでいた。
彼女は絵を描くのが好きだった。
とはいえ上手なタッチではなかったけど、10歳くらいで漫画として起承転結させていたし、
その発想力は「才能」そのものだったと思う。
彼女からはいろんな初めてを教えてもらった。
カプチーノなる飲み物を飲んだのは彼女の家でだった。
母子家庭だった彼女の家にはお手伝いさんのおばさんがいつもいた。いつもそのおばさんがおやつを出してくれた。
彼女のお母さんは銀座でお店をやっていたこともあり、身につけているものはいつも小綺麗で、ランドセルだっにち本革の、赤や黒じゃない、子どもの目から見ても高級そうなものだった。
彼女のうちにあったたくさんの漫画やゲームは、私の血や肉にもなった。
少女マンガを音読して笑ったり、ゲームのエンディングが夢オチで怒ったり、変な替え歌したり。
彼女と一緒に遊ぶとき、もう二人仲のいい友人がいて、4人で遊ぶことも多かった。
賢かったあの子
絵の上手のあいつ
才能に溢れた彼女
そして何も持っていない私
ある時期、彼女たちと一緒に新聞係をしていた。学級新聞の手前、いつものノリでふざけすぎると怒られる。
でも私は彼女たちの絵と物語をどうしても載せたかった。
彼女たちに存分にふざけてもらえるよう、真面目で面白くない「いい子」の記事を私が書くことで学級新聞の体裁を保ちながら、私たちは好きなものを作っていた。
小学校を卒業し、彼女は私立の中学へと進学した。それでも彼女の家族(その頃には引っ越しして、継父(仮)も同居していた)が留守にするとき、双方の親の了承のもと、彼女のうちに泊まりに行った。夕飯にはピザを頼んだり、彼女の家の近くにある美味しいパスタ屋さんに子どもだけでいった。大冒険の気分だった。
そんな私もそれぞれの場所で新たな居場所ができていき、高校生になるころには疎遠になっていた。一度隣の県に引っ越すという話は聞いたが、遊びに行くことはなくなった。
高校ではみんなバラバラになったものの、あの子やあいつとは時々遊んでいたけれど、彼女とはいつしか連絡が取れなくなった。
私はその後大学も卒業し、社会人になり、転職もした。気づいたら、あの学級新聞を作っていたときと同じような作業を仕事でしていた。
彼女のことはずーっと気になっていた。元気かな?何してるかな?また遊びたいな、と。
良く2人でやったゲーム。面白かったが苦労して到達したエンディングがまさかの夢オチで、「安易な夢オチ、ダメ。絶対」と2人の幼心に刻まれることになる。
その頃、mixiというSNSが流行った。mixiが日課になって行ったある日ふとこの中に彼女がいる気がした。名前や趣味をもとに検索したが見つからず、手がなくなったと落ち込んだとき、と母校の名前で検索した。
私たちの世代のスレッドを謎の人物が立てていた。彼女だった。
すぐに連絡し、彼女と地元で再会した。
茶色くて猫っ毛の髪はロングになっていて、細身の身体と気怠るさも相まってジャニスジョプリンみたいだな、と思った。
数年越しの再会を果たしたとき彼女の第一声は「ハグしていい?」。
こちらは幼少期から住み続けてる地元の駅前だから恥ずかしかったけど、断る理由が見つからずハグをした。
そのあと散歩した。
彼女が以前住んでいたマンションにも行った。母と二人で暮らしていたマンション。
着いたらそこは更地になっていた。
そっかー…と彼女はつぶやいて、「一本吸っていい?」とタバコ吸いながらな、その更地をしばらく眺めていた。
その後の会話で知ったのは、母の内縁の夫との3人暮らしはいろいろあったらしい。そこから逃げるように母娘で引っ越したが、その時期に離れて暮らしていた最愛の実父を亡くし、精神のバランスを崩したと話た。だからあの母と暮らし、お手伝いさんが世話してくれて、友だちとたくさん遊んだあの家は特別だったと。
そして帰る間際。当時みんなで駆け回っていた隣町の大きな公園、そのベンチで彼女はポロっとつぶやいた。
「ずっとここにいたら何か変わったのかな」
そこからまた交流があり、彼女の家に行ったり、他の友人を交えて遊ぶ機会も持てるようになった。切れかけたていた縁が再びつながる。私にとってはそれが凄く嬉しかった。
彼女の家に行った日、彼女の母に久しぶりに会った。キレイで若々しく、そして頼もしいお母さんで、3人でご飯を食べながらたくさん思い出話をした。
食後、彼女の部屋で会話をした。間接照明で薄暗い部屋には彼女の好きなもので飾られていた。その中に見慣れたスーパーファミコンがあった。スト2のカセットが刺さっていたと思う。「結局スーファミが1番面白いゲームだよ」とケラケラ笑っていた。
そのころ彼女は(非合法の草)を吸っていたようで、会話の流れで自然とカミングアウトされ、いま吸っていいかと聞かれた。
わたしはその類のものが好きではなく(そんなものに頼って気分の上げ下げ操ろうとするなよ、と思ってる。いまでも)、自分の身体がその煙を吸うことへの警戒心もあったので、もう帰るから帰ってからにして〜とくだけた口調で断り、帰宅した。
その後もいつものメンツで何度かご飯に行ったりした。魔法の植物に抵抗感を示さなかった子とはまた別のグループで遊びに行ったりもしていたらしい。
そうやって彼女と遊ぶことがまた日常になったある日の朝。朝に弱い私は、まだ半分寝ているような状態で出勤の準備をしていた。そんなとき彼女の番号から着信があった。
私より朝が弱く、午前中に起きるヤツではないので、なんとなく嫌な予感がして通話ボタンを押した。
彼女の母からだった。
昨日、彼女が亡くなったという連絡だった。
母が帰宅したときには自宅で亡くなっていた。式は明日。そんな話を淡々と聞いた。現実感がないまま、仲のいい他の2人にメールでその連絡を送って仕事へ行った。悲しみが生まれたのはそのずっと後だった。
棺に横たわる彼女を見たときからわたしはずっとムカツいている。今もし彼女に対面したら割と新鮮なテンションで怒れるくらい。
あんたのそんな最期を見送るために、
わたしはインターネットの箱にかじりついて
あんたを探したんじゃないんだよ。
最期の一歩を踏み出すその瞬間、
私たちとの時間を思い出して躊躇って欲しかった。問い詰めたい。あんたにとってはそんな軽い思い出だったのかよ、と。
私にとってはこんなに大事な、大切な記憶なのに。
BTSのラッパーであり、楽曲クリエイトの一翼を担うメンバーのSUGA。
外仕事(昨年はPSYのThat Thatが記憶に新しい)でプロデュース業も行ってもいるが、自身のソロワーク作品をリリースする際にはAgust Dと名乗る。
そんな彼が2020年に発表した2枚目の"ミックステープ" 「D-2」。
そこに収録された「Dear my friend」という曲を初めて聴いたとき、彼女のことを思い出した。
韓国語の歌詞の意味はまったく分からなかったが、タイトル、トラック、ビート、メロディー、ラップ。それらの
その後、歌詞の翻訳を読み、衝撃を受けた。
この曲で紡がれる「おまえと僕」のストーリーが、彼女と私のそれと似ていたから。
この歌詞がフィクションかノンフィクションかは分からない。もしノンフィクションだとしても、この曲の主人公がだれかも知り得ない。
ただ、今をときめくアイドルの顔も持つ、自分よりも若い音楽家が、音でもリリックでも生々しく描写をしていることに驚いたし、
その能力に触れたことで、私はBTSに更にのめり込むことになった。
彼女はメジャーなものが好きじゃなかったから、きっとBTSなんて、とか所詮Kポは…と批判してきたかもな。
それでもそんな憎まれ口を聞きたかったよ。
私は私の好きなものを聴いて、あんたが放棄したその後の世界を、それはそれは楽しく充実した日々を過ごしちゃうんだから。
悔しかったら化けて出てきなよ。待ってるから。